野村不動産HDの買い取りに失敗した日本郵政が、独自で不動産事業を開始するそうです。
日本郵政が、不動産事業の強化を狙い、子会社を新設する方針を固めたことが21日、明らかになった。2万4000カ所に上る郵便局など、全国に保有する優良な固定資産の活用を新たな収益の柱とするため、新会社で本格展開を目指す。月内にも正式発表する。
新会社名は「日本郵政不動産」で、郵政グループの持ち株会社である日本郵政の完全出資子会社として設立する方針。現在、不動産事業は郵政傘下の日本郵便が中心となり、大型複合ビル「KITTE(キッテ)」や遊休地を利用した駐車場などを展開しているが、今後は順次、新会社へ移管する方向だ。
出典:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180321-00000033-jij-bus_all
このニュースを聞いて、やっと不動産事業を行う気になったか!って感じです。
正直野村不動産と提携していたら、日本郵政はオーストラリアの物流業者の買い取り同様に失敗していたと思います。
でも世の中の人のコメントは違います・・・・
「今更不動産?人口が減っているのに遅すぎる」
「頭の固い役員しかいないのに、素人が独自にやっても成功するはずない」
など・・・
おそらく世の中の皆さんは、不動産事業と聞くと、住宅産業だと思ってしまうですよね。だから人口の減っている日本でノウハウもない日本郵政が今更不動産事業をやっても失敗するって思っているんですよ。
ただ不動産屋の私からしてみれば、不動産事業というのは住宅産業(売却)だけではありません。むしろ私は家賃収入(インカムゲイン)で日本郵政は収益を上げるべきだと思っております。
今回は日本郵政が不動産事業に成功する理由をご紹介させていただきます。
目次
- 1 野村不動産の買取が失敗に終わってよかったと思う理由は、マンション建設は頭打ちだから。
- 2 日本郵政の保有している不動産資産は2008年現在で2.8兆円!この規模の不動産を所有している会社はほとんどない(資産の組み換えをすべき)
- 3 そもそも保有している不動産のほとんどが不動産会社が運用したいと思う土地!個人の人の借り手がつかなくてもサブリースで貸し出せばいいだけの話。
- 4 日本郵政の社員は不動産のノウハウがないだとと騒がれているが、不動産事業を行うのであれば、大手不動産会社からヘッドハンティングをすればいいだけの話。
- 5 番外編:日本郵政のローンは金利が高すぎてまじで使えないから、不動産事業を行うのであれば金利を下げて、パッケージ商品として販売すべき。
- 6 まとめ
野村不動産の買取が失敗に終わってよかったと思う理由は、マンション建設は頭打ちだから。
日本郵政が野村不動産を買取しようとした理由は2つあります。
1つ目はオーストラリアの物流業者「トール社」の4000億の損失をごまかすため!
2つ目は野村不動産のマンション建築・販売のノウハウが欲しかったからです。
1つ目の理由については、今回は触れません。
2つ目の理由の野村不動産のマンション建築・販売のノウハウがほしかったという理由ですが、日本郵政はたくさんの不動産を所有しておきながらも、不動産保有資産額2.8兆円に対して、年間わずか280億程度しか売り上げを上げておらず、日本郵政の9割以上の利益を占めていたのが、かんぽ生命・日本郵便でした。
そこで日本郵政は野村不動産のマンション建築・販売のノウハウを手に入れれば、遊ばせている土地にマンションを建てて売れば、利益が出ると考えたのでしょう。
しかし私からしてみれば、今更マンション建設事業に手を出すのは遅すぎる話で、2018年3月現在では新築マンションの成約率が前年度と比べて10%以上落ちており、東京オリンピックが終われば、中国人投資家による中古マンション売却により、マンションが余ってしまうという供給加担になることが目に見えておりました。
2020年問題で都心のマンションが下落する3つの理由をプロが説明する。
つまり日本郵政が野村不動産を買取していたら、野村不動産が日本郵政の貸しビル事業の保有不動産をいいように使われておわっていただけだったということになります。
日本郵政は立地が良すぎる不動産をたくさん持っているのですから、売却することを前提にした不動産管理ではなく、家賃収入を得られるインカムゲインを中心に不動産事業を進めていく必要があるのです。
日本郵政の保有している不動産資産は2008年現在で2.8兆円!この規模の不動産を所有している会社はほとんどない(資産の組み換えをすべき)
出典:http://www.jfma.or.jp/FORUM/2009/doc/0209-1420-C.pdf
日本郵政の所有している不動産の規模は2008年の時ものになりますが、土地1.4兆円・建物1.4兆円の計2.8兆円にも上るといわれております。この規模で不動産を保有している不動産会社はほとんどありません。
日本郵政が所有している代表的な物件は、東京の丸の内にあるKITTEや大宮・名古屋・博多に複合施設としてビルを所有しており、そのほかにも駐車場や郵便局の立地として所有しております。
これだけ不動産を持っているわけですから、建物などを建築する費用というのも、立地の悪い駐車場として貸し出ししている物件を売却してしまえば建物を建築する費用も新たに用意をしなくて済みます。
つまり私が日本郵政が不動産事業として成功するための方法は、立地の悪い土地を資産処分をし、そのお金で立地の良い所有地に新たな複合施設を建築すれば、家賃収入が増え、売却した分の余計な固定資産税分の経費を抑えることができます。
早急に立地の悪いところを売却し、立地の良い不動産の購入。KITTEなどの実績ある貸しビルの修繕費として充てるべきでしょう。
そもそも保有している不動産のほとんどが不動産会社が運用したいと思う土地!個人の人の借り手がつかなくてもサブリースで貸し出せばいいだけの話。
日本郵政が所有している不動産の多くは、駅から至近の不動産で、日本郵政がノウハウがなく、個人の方に貸し出しがうまくいかない状況であれば、地元の不動産業者に貸し出し(サブリース契約)をすればいいのです。
サブリース契約とは、不動産会社に土地や建物を貸し出してサブリース料として家賃をいただきます。不動産会社はサブリースにより借りた土地と建物を、一般個人や企業に転借することで、転借料からサブリース代を差し引いた差額は不動産会社の利益とするため、立地が良く、高い家賃で貸し出しができる日本郵政の不動産は、不動産会社からしてみても運用したい土地なのです。
サブリース契約は普通の相場の80%程度の家賃となってしまいますが、日本郵政からしてみれば、貸す相手が決まらず、不動産を遊ばせておくのであれば、いっそうのこと不動産会社とサブリース契約を結ぶことだってできます。
立地の良い不動産をたくさん所有しているってことは、それだけ貸し出しする手段もたくさんあるってことです。
*個人投資家はサブリース契約でだまされている方が多いので注意が必要です。
レオパレス21の悪質なサブリース問題から学ぶ家賃保証の実態とは
日本郵政の社員は不動産のノウハウがないだとと騒がれているが、不動産事業を行うのであれば、大手不動産会社からヘッドハンティングをすればいいだけの話。
ヤフコメなんかを見ていると、野村不動産が買取れなかった時点で失敗!ノウハウがない社員が不動産事業をやるのは無理と決めつけているコメントが目立ちます。
私からしてみれば、今までも2.8兆円の不動産を運用し、約280億程度の収益を上げるというのは不動産素人では、到底できる技だとは私は思いません。もうすでに大手不動産屋の部長クラスなどをヘッドハンティングして働いてもらっているからこそできる技だと思います。
ただ2.8兆円も不動産の資産があるのに対して、収益が280億ですから、利回りにするとわずか1%しかありません。普通の不動産投資では都内であれば5%~10%程度・地方物件であれば10%~20%の利回りが出るので、日本郵政が不動産運用の仕方が悪いと思うのも事実!
逆に言えば、不動産事業を50人程度の子会社として発足するそうなので、全員を大手不動産会社で経験・資格を有している従業員にすれば、それぞれの経験値によって、ヤフコメなどでいうノウハウ不足って話にはならないと思うのです。
不動産事業を開始することで、1%だった利回りが10%になれば、単純に2000億以上も収益になります。しかもこれが一時的な売却益ではなく、家賃収入として毎年安定的に入ってくる収入であれば、不動産事業を開始する理由も納得です。
むしろ野村不動産の買取をしていれば、良い立地をマンションにして売却していたと思いますので、これら3つの理由から野村不動産の買取には失敗しましたが、逆に日本郵政が不動産事業を開始することは成功するのではと思っております。
番外編:日本郵政のローンは金利が高すぎてまじで使えないから、不動産事業を行うのであれば金利を下げて、パッケージ商品として販売すべき。
ゆうちょ銀行の住宅ローンの営業マンが昔よく私のところに、ローンを使ってくださいとお願いにきておりましたが、変動金利1%未満の時代に3%以上の変動金利の商品しかありませんでした。
ゆうちょ銀行のローンは、赤字経営の人や退職金と年金だけの人でもローンが組めるといった、貸し出しのリスクが高い人にも融資するというのが売りなのですが、今住宅を求めている人の多くは、家の家賃よりローンを組んだほうが安くなるという理由から家を買うことがほとんどです。
そういう人たちに金利が3倍以上の商品を紹介したとしても、誰も利用はしてくれません。
不動産事業を行うのであれば、日本郵政が不動産売却時に、購入してくれる人に格安の金利で貸し出しをするなどのパッケージ商品をつけることで、売却益に対しての金利も利益として得ることができます。
はっきり言って今のゆうちょ銀行のローンは使い物になりません。不動産事業を行うのであれば、その辺の整備を速く行うべきですね。
まとめ
・日本郵政は野村不動産HDの買取に失敗したことで、安易なマンション建設を行わずに済む。このことから売却による収益ではなく、貸しビルなどによる家賃収入をベースに独自に運営することで、日本郵政の不動産事業は成功するとみている。
・日本郵政は2.8兆分の不動産を所有し、更にほとんどの土地は立地が良いところ!これにより日本郵政がわざわざ土地活用をしなくても、最悪は不動産会社とのサブリース契約によって収益を得ることができる。
・日本郵政に不動産のノウハウが全くないとは思えない。新しく行う不動産事業の50人は大手不動産会社からヘッドハンティングをした精鋭ぞろいだと思う。
・日本郵政の不動産事業は2.8兆円に対して280億の収益!これは利回りがたったの1%でしかない。成長する余地がまだまだあるため、利回りが10%以上行けばあっという間に2000億以上の収益が期待できる。
日本郵政が不動産事業に手を出したことについて否定的な意見が多いのは、やっぱりトール社の一件が原因でしょう。本業がうまくいっていないのに、手を伸ばしすぎだという否定的な意見が多いですが、人口が減っている日本で、運有業と保険業だけでやっていくのは停滞にしかなりません。
不動産事業を本格的に着手するというのはいいことですが、東京オリンピックが決まってからすぐに手を出しておくべきでしたねと思っております。
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